「あっ……そこは」

「何だよ、いいだろ?」

「ダメだよ、そこは」

「うるせぇな、大声は出すなよ」

「わかってるけど、それは強引だって…
ねぇ、あっ!」


ビリッ!!


「あーあ、やっぱり破れたでしょ?
やり直しね」



ここは私立野いちご学園高等部

技術教室棟4階の多目的室だ


ガチャガチャとドアを開ける音がする

「ねー、また鍵が閉まってるよ」
「えー、また?」
「火曜日だけいつも使えないね、誰が使ってるんだろ」

ドアの向こうでは女子生徒の声が聞こえる

人差し指を立てて私の唇に当ててくる


「しーっ」


わかってるよと私は人差し指を握って口から離させた

人差し指を出してきたのは
3年A組の東条朝都(とうじょうあさと)

この学園の生徒会長だ

頭脳明晰で先生にも1目置かれているが
友達のいち子曰く

実は暴走族の総長らしいと……

確かにバイクで通学してるのを見たことはあるがこの学園では16歳になり、なおかつ家が遠い生徒はバイク通学可なのだ

大学もストレートでいけるため、バイク通学ではない生徒は一人暮らしもOK

そして、私は3年B組
山中夏鈴(やまなかかりん)

高校からの外部入学組だ
少し家から遠いがバスが通っているため
バス通学をしている

帰宅部だからバス停にいると時々ブォンと
バイクが2台通っていく

多分会長と誰かだろうと思っていた

同じ進学クラスだが3年間同じクラスには
なったことはない

それなのに何故今一緒に多目的室にいるかと
いうと……