遠距離恋愛は人をダメにする。

家に着いた親たちはアルコールを飲み始めた。

お兄ちゃんと優くんは炭酸飲料、私はお茶を飲んでいる。

お兄ちゃんと優くんは、なんか知らないけど、ゲームの話で盛り上がっていて、今からやろうと、優くんを自分の部屋へ招く。

そのまま、ふたりはリビングから姿を消す。

どうせ、あのふたり…今夜は同じ部屋で寝るんだろうし…ゲームに決着がついた頃に寝落ちでもするのだろう。

私も…そのまま、部屋に戻るとしよう。

親たちは話弾んでるし。

私は、ひとり、自分の部屋でベッドに寝転がる。

もちろん、いつでも寝られるようにパジャマにも着替えた。

するとタイミング良く菜々からLINEがくる。

【晴良、今大丈夫?】

【うん。大丈夫だよ】

【あれから彰くんと話したけど…】
ここでいう話したは、きっとLINEであろう。

【別れることにした】

【えっ、マジで?】

【うん。マジで】

【だって、そんな大きなケンカだったの?】

【ううん。きっかけは…】
菜々がうちらと別れた後の話を説明してくれた。

【いやいや、それで別れる?普通】

【きっと、これってきっかけだけであって、いろいろ思うところがあったと思う。お互いに】

【えっ、菜々も彰くんに対してあったの?】

【うん。まぁね】

【いや、ふたりとも仲よかったじゃん。今日の昼だって】

【うん。仲いいよ。でも、仲いいだけなんだよね。お互いに】

うーん。わからん。

【だから、彼氏彼女の仲は解消で、ただの仲良し、幼なじみに戻った】

【うーん。私にはよくわからないけど、ふたりで話してそうなったならいいんじゃない?】

【うん】

あ、そうだ。
その時、さっきのスーパー銭湯でのことを思い出した。

悠実のこと。

でも、今は言わないほうが良さそうだ。

【でもさぁ…】
急に菜々が言う。

【彰くんって、他に好きな子が出来たんじゃないかと思うんだよね】

ひぇー。止めてぇぇ。

【そうなの?なんでそう思うの?】

【なんとなく】

女の勘ってやつですか。

【そうなんだ】

【いや、わからないけどね】

【そうなの?】

【そういえば、優くんは隣にいるの?】

【いないよ。今、自分の部屋だし。優くんはお兄ちゃんの部屋でゲームしてる】

【なーんだ】

【何、それ。何を期待してるの?】

【いや、別に】

【じゃあ、また、明後日、学校でね】

【うん。おやすみ】

【おやすみ】

ふぅ。
女の勘かぁ。
私には持ち合わせていないけど、あった方がいいのかなぁ。
いや、いや、そんなの勘が働いてイヤな思いするの嫌だなぁ。

そんなことを思っていると…
また、LINEがくる。

【晴良ちゃん。今、大丈夫?】

今度は桃香ちゃんからだ。

【うん。大丈夫だよ】

【優くん隣にいるの?】

【ううん。優くんはお兄ちゃんの部屋でゲームしてる】

【そうなんだ】

【晴良ちゃんはゲームしないの?】

【うん。お兄ちゃんのやるゲーム苦手】

【ははっ。優くんのお母さんは?】

【うちの親と飲んでる】

【じゃあ、晴良ちゃんは今ひとりなの?】

【そう。自分の部屋でひとり】

【あのさぁ。あ、これ、優くんに言わないでね】

【うん】
こういう、○○に言わないでねって苦手。

【優くんって、他に好きな子いるんじゃないかなぁって最近思う】

えっ、こっちも?

【えっ、なんで?】

【なんとなく】

こちらも女の勘ってやつ?

【そっちのことはわからないけど、大丈夫だと思うけど】

【うーん。こっちも…不安といえば不安だけど】

うん?
こっちも?

【そうなの?】

【だって、あの優くんだよ。人気あるから】

【確かに。でも…】

“こっちも”
触れていいのか、どうか迷ったけど…

【そっち以外で不安なことあるの?】
ダイレクトに聞いてみた。

【うーん】
あ、逆にダイレクトに聞き過ぎたかな?

【あ、晴良ちゃんにははっきり言うね。優くんって晴良ちゃんのこと好きなんじゃないかと】

だろうね。
そっちじゃなければ、こっちの私しか無いだろう。

【ない、ない。ただの幼なじみだよ】

【いや、晴良ちゃんはそう思っていても…】

【大丈夫だよ。私はあのインチキな笑顔に騙されないから】

【ははっ、何それ笑】

【こっちでそんな素振りしたら、私が桃香ちゃんにチクるから、安心して】

【うん。ありがとう】

そんな話をしてから、あとはたわいの無い話をして時間が過ぎる。

【私も夏に絶対、犬山のおばあちゃんの家に行くから、いっしょに遊ぼうね】

【うん】

【おやすみ】

【うん。おやすみ】