遠距離恋愛は人をダメにする。

しばらくして、お互いの親がサウナから出て、悠実とはバイバイをした。

そして、うちのママと優くんのお母さんはこれから身体を洗ったり、大浴場や露天風呂を満喫するみたいだから、私はお風呂から出た。

そして、親の言われたとおり、男性陣との待ち合わせ場所であるリラックスルームに行った。

もちろん、脱衣場でしっかり髪を乾かし、体重計にも恐る恐る乗ったけど。

リラックスルームには、漫画もたくさんあるので、とりあえず五等分の花嫁を手にした。

すると、後ろから優くんが…

「もう出たの?」

「うん」

「お母さんたちは?」

「きっとまだまだだと思う」

「そうなんだ。なんか飲む?」

「え、いいよぉ」

「ううん。晴良のお父さんが…これで何か飲みなさいって」

優くんの手には千円札が…

「じゃあ、フルーツ牛乳」

「ははっ、いいね。銭湯だもんね。晴良、腰に手をおいて飲むの?俺もコーヒー牛乳にしよっと。ちょっと待っててね」

すると、優くんは牛乳の自販機の方に向かって行った。
そして、両手に牛乳瓶をもって…

「はい」

「ありがとう。そういえば、お兄ちゃんは?」

「お兄ちゃんはお父さんとサウナに行った」

「ああ、サウナね」

「晴良もサウナ入った?」

「ううん。ママと優くんのお母さんは最初にサウナに入りに行ったよ」

「そうなんだ」

「優くんは?」

「俺はいいや。今日は」

「そうなんだ。そういえば、桃香ちゃんからLINE来た?」

「うん?待って」
そう言うと、改めて思い出したかのように優くんは自分のスマホを確認する。

「やべっ。めちゃ来てるじゃん。夕方ぐらいから」

「知らんよぉぉ」
私はちょっと意地悪な顔をする。

「だって、昼からずっと出掛けてたじゃん」
優くんは仕方ないじゃんって顔をする。

私は知らんぷりをして、五等分の花嫁を読む。

すると、優くんは自撮りするために腕を伸ばす。

シャッター音

「えっ」
このアングル…

絶対に私も入ったよね。

「ちょ、ちょっとぉ、何撮ってるのよ」
私は慌てる。

一応、ちゃんと服は着ているし、髪も乾かしたけど…

「よしっ」

「何がよしっなの?」

「桃香に送ったしっ」

「はぁぁぁ」
私は慌てる。

「何、送っとるの」

すると、優くんは自分のスマホを見せる。

【スーパー銭湯でくつろぎ中】

そこには、優くんと漫画を読んでる私の画像。

「ちょ、ちょっとぉ、止めてよぉ」

「何が?」

「変に誤解したら困るやん」

「誤解?そんなのしないよ。晴良の家族と出掛けてるとしか」

「そうだけど…」

「あ、返事きた」

私は桃香ちゃんの返事に恐怖を感じた。
そりゃ、優くんの言うとおり、私の家族とスーパー銭湯に来てるだけだけど…
このツーショットは…

「ほら」
優くんは…余裕な顔をして、桃香ちゃんからの返事を私に見せる。

【いいなぁ。私も行きたい】

でも、でもさぁ、本当にうちの家族とスーパー銭湯に出掛けてるのは事実だけど、彼女さんから見たら、こんなの送られても嬉しい訳ないし…こう返事するしかないよね。

私だったら、なぜ?この画像って思う。
唯一の救いは、私がカメラ目線じゃないこと。普通に漫画を読んでること。

「優くん、止めなよ。桃香ちゃんが可哀想やん」

思わず、同性として、女性として本音を洩らす。

「絶対に、桃香ちゃんいい気分じゃないよ」

すると、優くんは…素直に…謝る。
「そうだね。ごめん」

「いやいや、謝る相手が違うし」

「そうだね。ちゃんと桃香に説明するよ」

そう言って、優くんは…数分間、桃香ちゃんとLINEのやり取りをする。

その間、私は…ふたりが気にはなるが、知らん顔をして漫画を読む。

一花と風太郎くんが林間学校で倉庫に閉じ込められたところ…

私は漫画に集中しようとすると…
後ろから…

「晴良ちゃん」