遠距離恋愛は人をダメにする。

しばらく4人で懐かしい話をした後、家路につく。

本来は彰くんは東小出身なので晴良らと同じ方角なのだが、菜々と一緒に帰るため、途中のコンビニの角で別れた。

「いやぁ、楽しかった」

「うん。楽しかったね」

「あの菜々って子も吹奏楽なんだね」

「そう。で、彰くんはソフトテニスね。なんか、優くんと桃香ちゃんみたいだね」

「そんなこと言ったら、俺が晴良と付き合っても同じじゃん」

「はぁ?何言っとるの。桃香ちゃんに言うよぉ」

「ははっ」

「本当に、もう」

「でも、あのふたりも幼なじみなんだよね」

「でっ」

「俺らも…」
優くんが、自分と私を指差す。

「だから?」

「別に」
爽やかに笑う。

相変わらず、この爽やかさが曲者だ。

決してチャラくなく、まるでアイドルが主演のドラマの1コマのようになる。

ま、そういうドラマって、軽めの恋愛ドラマだけどね。

まぁ、確かに…さっき、4人でお互いの昔話をして、懐かしさがよぎった。

「あっ」

“ぼくがずっと守ってあげるよ”

また、思い出した。
東京に行った帰りの新幹線の中で思い出したこと。

“ぼくがずっと守ってあげるよ”

しかし、ただ守ってくれるだけじゃなかった。

いつもいつも一緒にいてくれた。

嬉しい時も悲しい時もいつも一緒にいてくれた。

そして、いちばんよく話をした。
嬉しい話も悲しい話もいつも聞いてくれたし、話してくれた。

それが優くんだった。

「どうした?」
優くんが私の顔を見る。

「別に」
そう私は言うけれど、ちらっと見える優くんの横顔は…あの時の顔だった。

いや、全然違うけど、あの時の顔のように見えた。

「どうせ、昔を思い出したんだろ」

「はぁぁぁ」
そういうところがムカつく。

でも、そうやって、分かってくれてるのが嬉しい。

「ほら、行くよ」

「ま、待てよぉ。ゆっくり歩こうぜ。思い出に浸りながら」

「何、それ」

でも、優くんと2人きりで歩く時が、また来るなんて…

「運命ってやつ?」

「は?」

こいつはエスパーか?

動揺のあまりに、目を反らす目的で…
スマホを見る。

「あっ」

「うん?どうした?」

「菜々ちゃんからLINE来てる」

【晴良ちゃん。さっきは楽しかったね】

【今日、優くんがこっちに来てること、優くんの彼女さんは知ってるの?】

「だってさ」
私は、自分のスマホ画面を優くんに見せながら言う。

【うん。楽しかった】

【うん。桃香ちゃん知ってるよ】

私は菜々に返信した。

「あ、そういえば、桃香とLINEよくしてるみたいじゃん」

「うん。してるよ。同じ吹奏楽ですから」

「俺にはLINE交換すらしないくせに」

「うん?あれ?もしかして、優くん拗ねてる?」
私は少し意地悪な顔をする。

「そりゃ、拗ねるさぁ」

「あら。意外」

「えっ?意外?」

「いや、そういう意味じゃなくて…」

「じゃあ、どういう意味?」

「いや、素直に拗ねるって言ったから」

「だって、この前だって。ほら、聖蹟の駅でLINE交換しよって言ってもしてくれなかったじゃん」

「だって、それは、ねぇ…」

「は?」

「彼女さんの前で…交換できるわけないじゃん」

「でも、あの時、桃香はいいよって言ってたじゃん」

「いやいや、出来ないよぉ」

「じゃあ、今日ならいいの?」

「考えとくわ」

「何それ」

そう会話をしている間に、私の家に着いた。

親たちも、そして、お兄ちゃんも帰ってきていた。