「昨日、どうだった?幼なじみに会えた?」

真っ先に聞いてきたのは、菜々だった。

週が開けて、今日からまた長い1週間が始まる。
菜々とは小学校が違うので、使う校門も、そして登下校の方向も違う。

靴箱のところで偶然会うか、教室に向かう廊下で会うか、それとも教室で会うかだ。

今朝は、菜々の方が珍しく早く教室に来ていたので、私が教室に入ると同時に菜々が私の方に駆け寄ってきた。


「うん。会えたよ。途中、ママにバレて…」

「えっ?バレたって?向こうに行ってたこと?」

「そう。住んでたアパートの近くでお兄ちゃんの同級生のお母さんに会っちゃって、そのお母さんがうちのママに連絡したみたいで」

「ええっ?」

「ま、私が悪いんだけどね。そのお母さんにママも一緒に来てるって言っちゃったから」

「ああ、そうかぁ」

「でも、そのお兄ちゃんの同級生の家って私たちより1つ下の子がいて、その子とよく遊んでいたし、その子にも会えたし、その子と昔、通ってた保育園にも行ったし」

「そうなんだ」

「で、その子、悠ちゃんっていうんだけど、保育園に行った時に同じダンススクールに行ってる子で出会って」

「ダンススクール?なんかおしゃれだね」

「スポーツジムにあるダンススクールみたい。で、その子が私たちと同級生だったの」

「その子は、晴良は知ってた子?」

「ううん。知らない子。保育園っていうか幼稚園違ったみたいで」

「じゃあ、その子から…」

「あ、桃香ちゃんっていうんだけど…」

「その桃香ちゃんって子から、晴良の同級生や幼なじみのこと聞いたの?」

「それがさぁ…」

「うん?」

「その桃香ちゃんがいちばん仲良かった幼なじみの彼女さんで」

「ええええっ」
「あれ?えっ?」
続け様に菜々が私に聞く。

「その桃香ちゃんの彼氏くん。あ、晴良の幼なじみくんね。晴良って幼なじみくんの名前覚えてた?思い出とか覚えてた?それとも桃香っていう子から幼なじみくんの名前を聞いて思い出した?」

「いやいや、そんな単純な話じゃないのよぉ」

「だよね。確か、幼なじみみたいな子って無いみたいなこと言ってたよね。思い出みたいな事も」

「そう。本当にそう」

「っていうか、初対面の桃香っていう子の彼の名前、いきなり聞けるって」

「いやいや、聞いてないよ」

「じゃあ、桃香って子が初対面の晴良に言ってきたの?私、彼がいて…みたいに」

「それも違う。実は、私が通ってた保育園に行った後に行こうとしたところと桃香ちゃんがこれから行こうとしたところが同じで…それも、桃香ちゃんはこれから彼と会うってことも知らなくて…とにかく、行くところが同じだから一緒に行こうって話になって」

「ああ、そういうことね」

「で、そこに着いたらいたんよ。桃香ちゃんの彼が」

「あ、で、もしかして、この人って?って晴良が思い出したの?」

「全然」

「は?」

「だって、全然面影ないし、向こうはすぐに思い出して、話かけてきたけど…私はこの人誰って?」

「でも、結局、思い出したんだよね。晴良は」

「まぁね」

「面影無いって。めちゃ格好よくなってたとか?」

「まぁね」

「ええっ、何それ?めちゃいいじゃん」

「いやいや、今は桃香ちゃんの彼だし。あ、それで桃香ちゃんも苦労してるみたいよ」

「苦労?」

「格好いいし、女が寄ってくるみたいよ」

「えっ、何それ。見てみたいなぁ。あ、芸能人に例えると?」

「なにわ男子の長尾くんみたいな感じだったかな」

「えええっ、マジで」

「いやいや、菜々には彰くんがいるじゃない」

「そ、そうだけど」

「彰くんも格好いい方じゃん」

「長尾くんには完敗ですよ」

「ああ、そんな事言っていいの?」

「うーん」

「うん?」

「ダメかな」

「あれ?菜々?彰くんと何かあった?」