次の日。

「おはよ……」
「おはよう」

伊織と朝食を囲むが、昨夜のことがあったため気まずさが残り、会話がぎこちなくなっていた。
なんか、まともに伊織の顔が見れない……。
朝食を食べ終えた伊織が、支度のため席を外すと莉奈ちゃんがソッと顔を寄せてきた。

「真琴お姉ちゃんとお兄ちゃん、喧嘩でもしたの?」

やっぱり気がつくよね……。

「喧嘩したわけではないんだけど……ね」

言葉を濁して微笑むが、莉奈ちゃんは首を傾げる。

「何があったかわからないけど、早く仲直りした方が良いよ?」
「はい……」

莉奈ちゃんの大人びた言い方に、姿勢を正して頷く。

仲直りか……。
喧嘩したわけじゃないから、仲直りといわれてもしようがない。
学校へ向かう社内もなんだか空気が重かった。

そんな私達の様子にいち早く気がついたのは薫だった。

「どうしたの、あなたたち」

昼休み。
薫と2人でお昼を食べていると、そう聞いてきた。

「なんか空気が変よ。喧嘩でもしたの? あ、もしかして昨日の件!?」

薫がいう昨日の件とは、日葵ちゃんのモデルのことだ。
それに小さく頷く。

「やっぱりか……」
「喧嘩ってほどではないんだけどね。ちょっと気まずくて……」

私は重いため息をつく。
仕事だってわかっているから、強く言えない。
でもなんかスッキリしないんだよね。

「よし! じゃぁ、今日はうちに泊まりにおいでよ!」
「えぇ!?」
「明日は学校は休みだし、雨宮やお付きの人には勉強会するって言っとけばいいでしょ。お菓子食べながら、その気持ち全部吐き出しちゃえ」

薫は笑ってポンと肩を叩く。
薫の家にお泊まりか。凄く楽しそう。

「本当にいいの?」
「うん!」
「じゃぁ、遠慮なく!」

わぁいと2人で盛り上っていると、そこに伊織と肇君が通りかかった。

「あ、雨宮ー! 今日、真琴、うちでお泊まり勉強会することになったから」
「お泊まり勉強会!?」
「うわぁ、なにそれ俺も行きたーい」

驚く伊織とは正反対に、肇君がワクワクした顔で寄ってきた。

「女子会ですから」

薫にピシャッと言われて、子犬のようにシュンとしている。

「急だな。いいのか? 夏目」
「もちろん。明日休みだし、真琴とお泊まり会したかったから誘ったの」

ねぇーと言われてうんと頷く。
伊織は「男はいないんだよな」と眉間にシワを寄せながら聞く。

「当たり前でしょ。本当、心配性よね」
「薫と2人だから。いいでしょう?」
「あぁ。ゆっくりしておいで」

伊織は微笑んで、肇君を連れて去っていった。