その後は何事もなかったかのように、ふたりで文化祭を楽しんだ。
そして、コンテストの時間が来たので伊織は会場へと向かう。
校庭の一角にステージをセットしているのだが、客席は人であふれかえっていた。
凄い人……。これじゃぁ、座れないな。
席は埋まっており、仕方なく私は端っこから見守ることにした。
男性から発表されるようで、名前が呼ばれた人からステージに立って行った。

『エントリーナンバー6 雨宮伊織さん。三年生』

伊織の名前が呼ばれた途端、割れんばかりの黄色い歓声が上がる。
当の伊織は他の人みたく、手を振ったり笑顔を作ることなく顔色を変えずにステージに立っている。
いや、きっと内心は嫌なんだろうな。
エントリーされた人が全員そろい、本日の投票結果が発表された。

『ミスターコンテスト、栄えある優勝は!!!』

ドラムの音を鳴らして、司会者はもったいぶる。

『エントリーナンバー6 雨宮伊織さん!!』

ここでまた、キャーと黄色い歓声。
どことなく「やっぱりね」という雰囲気も漂う。

『雨宮君、これで三連覇ですね。史上初となります。お気持ちを聞かせてください』
「嬉しいです、ありがとうございます」

全く興味がなさそうに、事務的に挨拶をしている。
一応、少し笑っておこうかなと言った感じで微笑むとまた歓声が上がった。
こういう伊織を見ると、本当に人気があるし、凄い人と結婚しているんだなと思う。
卒業後に結婚を発表したら、不釣り合いだとか思われるのだろうか。
日葵ちゃんのような可愛い子だったら……。
ぼんやりと考えていたら、いつのまにか女子のミスコンが始まっており、優勝者が発表されるころだった。

『栄えある優勝者は!! 川口日葵さんです!!』

予想通り、日葵ちゃんの名前が呼ばれて歓声が上がる。
日葵ちゃんは男子の歓声が多い気がした。

「とっても嬉しいです。皆さんの投票のおかげです! ありがとうございます」
『では優勝者の二人に並んでもらって、写真撮影を致します』

司会者に呼ばれて、伊織と日葵ちゃんは並んでステージの中央に立つ。

『お二人が並ぶととっても絵になりますね。お似合ですー』

司会者のはやし立てる声に日葵ちゃんは照れたような表情を見せ、会場も盛り上がる。
こんなことでいちいち傷ついていちゃダメだってわかっているけど、胸が痛くなる。
伊織の隣に立つのは、常に私でいたいけど……。
自分の嫉妬心に嫌気がさした。
日葵ちゃんは伊織に振られているんだから、嫉妬する必要なんてないのに……。
なんだか不安になるんだ。

『今日もお二人で校内を歩いている姿を見ましたよ。まさかお二人の関係って……』
『違いますよ~。伊織先輩には他に大切な人がいるみたいですから』

マイク越しにそういうと、ステージにいる日葵ちゃんと目が合った。
日葵ちゃんの視線をって、会場の人が私の方を振り向く。

『綾川先輩、私……伊織先輩のこと諦めませんから』

日葵ちゃんの発言に会場がわぁぁ!!と盛り上がった。
伊織は唖然としたように日葵ちゃんを見下ろしている。
え、日葵ちゃん振られたばかりだよね!? 
なのにまだ諦めないなんて……。嘘でしょう……。