感心しながら写真を撮り続けていると、伊織がこちらを振り返った。

「真琴、写真撮らないで」
「え~、もう撮っちゃった」
「頼む!親父にだけは見せないでくれ」
「ハハハ……」

伊織の頼みに笑ってごまかす。

「女王陛下。お姿とお声がマッチしないので声を出されませんようお願いします」

すかさずウサギが注意を促し、みんな爆笑する。
確かにこの美しい声から、男性の声がするのはミスマッチだ。せめて高い声を出してもらわなければ。

「うわ、マジで綺麗じゃん」

教室の窓から肇君が人をかき分けて顔を覗かせた。
目がキラキラしてワクワクしている子供のような顔だ。親友の姿が面白くて仕方がないのだろう。
肇君の顔を見て伊織が眉間にシワを寄せ、小さく舌打ちをする。
そしてウサギに何か耳打ちをした。
ウサギが頷いて、肇君の側までやってくる。

「え、なに……」
「女王陛下から、打ち首にしろとのご命令が」
「冗談でしょう!」

慌てた肇君が廊下に飛び出して行った。
それを見て、伊織は満足そうに微笑み、また小さい黄色い悲鳴が起こったのだった。