とりあえず、とは!!??

そして絶対にとは!!!?


「これから彼の収録があるので早くお願いします」

「そんなこと言われても…」


「市原さん」


ふわっと、甘い香水の香りがしたかと思うと、目の前いっぱいに楓くんの顔が。

そして、手。


手…!


手ぇぇぇぇぇぇ!


手を握られとる!!!!



「俺、市原さんには迷惑かけません。だからサイン、お願いします」


…はい、もうアウトです。

完全にこちらの敗北。

理由なんてどうでもいい。


「サインしました。確認お願いします」

「…はい、たしかに」


そんなキラキラした目で訴えられたら、たまったもんじゃない。

推しのためならなんだってする。

推しの幸せのためなら。




「では早速、部下達に楓の荷物を運ばせますので。楓が帰宅する前までには完了するかと」

「市原さんありがとう。俺、仕事が休みの日はちゃんと家事手伝うから」

「は、はい…わかりました」


…ん?


「いい、今…なんて…?」