───そう、思っていたんだけど。



「こちらが新堂楓とのことに関しての契約書になります。1度目を通して頂き、サインをお願いします」

「え、えっと…あの…」

「新堂楓です。よろしく」

「ひっ……!!」


今朝、インターホンが鳴りドアを開けると、メガネをかけたスーツ姿の男性。

そして、お、お…推しの…楓くんが立っていた。

訳もわからず紙を何枚も渡され、イマココ。

と、とりあえず今日が仕事休みの日でよかった…。




「あの、これは夢ですか…?」

「は?何を言ってるんですか?とにかく早く契約書にサインしてください」

「前田さん、もうちょっと柔らかい言い方しても…」

「はあ。忙しいんだよ。お前はそれを分かってるのか?」


な、なんか目の前で言い合いしてるし…。

震える手で契約書?に目を通す。

楓くんの香水なのかな…。いい匂いすぎて、そっちに気が取られちゃうよ…!!


「…ん?」

「なんですか?」


そもそもどうして楓くんがここに…?

接点なんてまるでないのに。


「あの〜…なぜ、ここに彼が…?いや、私はめちゃくちゃ嬉しいんですよ!?ただ…理由を聞かされていないので…それに、契約書とは…」


楓くんの存在感が凄すぎて、脳内が混乱しそうだ。

いや、もう既にしているんだけど。

なんとか冷静にならねばと、メガネの彼を見つめる。


「あー…」

「前田さん、絶対に言わないでください」

「そういうことなので、とりあえずサインしてください」