「わあ!」

私はその声にびっくりして、体を起こそうとした。

でもなぜか体が起き上がらない。

頭の上から、私をからかうようにケラケラと笑う声が聞こえてきた。

「また寝てる、きょうちゃんは悪い子だね。ねえ、きょうちゃん?聞いてる?」

きょう?私のこと?
あなたはいったい…


声の主を確認しようとするけどやっぱり起き上がれない。

どうして、どうしてなの!

私が焦っていると、頭を手で触れられる感覚がした。

それから顎の下に添えられた手は、私の顔をゆっくりと持ち上げ…。


ピピピ、ピピピ、ピピピピピピ

突然の機械音に夢の世界は一瞬にして遮断された。
私は手探りで目覚ましを見つけ、バンと叩いて止めた。

午前8時、もう起きる時間だ。

私はベッドから起き上がり体を伸ばす。

うーー、今日も学校だーー。
まだ疲れは残っている気がするけど、仕方ない。

私は顔を洗い、服を着替えて学校に向かう準備を始めた。

きょうちゃん、それは私が地元の友達に呼ばれていたあだ名だ。

あの声、
どこかで聞いたことがあるような…。

あっいけない、早く支度しないと。

私は慌ててメイクを始める。

メイクなんかしても別に見せる相手なんかいないけど、

大学って、
友達を作って、彼氏を作って、遊びに行って、バイトをして、サークルや部活に入って、

そういう充実したことができると思ってたのに

現実は、

友達と遊ぶ時間もお金もなく、毎日をセカセカと過ごしていくだけ、

多分私が仕送りなし大学生だからなんだろうけど、コミュ力もないし

いけない、暗くなっちゃだめ!

1人でいるとどううしても暗くなってしまう。

実家にいた頃は、毎日兄弟たちと話していたし、幼なじみのいつもの3人と遊びに行ったりしていたのに…

ダメダメ!!

顔をバシバシと叩く。

私は気を取り直してメイクを続けた。