「あれ、涼太じゃない?」
「まさか…」


「となりに女の子いる…」
私は、今まさに映画が始まるその時に、親友のあかりの指す方を、見た。


「なんで?!」


涼太は今日は、友達と遊ぶから会えないって、ゴメンねって言ってたのに。
頭がパニック状態。
なんて考えているうちに、劇場が暗くなってしまった。

「あかり、女の子誰だか分かった?」
「ごめん。分からんかった」


今日は、あかりと今1番泣けるというラブストーリーの映画を観にきていた。


でも今は、
(涼太が浮気!?)
のキーワードが、頭の中でいっぱいに。

あんなに優しい彼氏が!
嘘でしょ~
自然と涙がでてきて
「あかり、映画観るのやめる」
と言って、出口に行こうとした。
「待って。私も行くよ」
「ありがと」
私たちは、ロビーに出た。


「許せん。涼太め!」
「帰ろっかな」
私が涙目で言うと
「ダメ」
あかりは、まっすぐ私の目を見つめて
「涼太と話しないと。私もそばにいるから」
「うん」
「きっと、何かの間違いだって」
「あかり、涼太に私から聞いてみる。勇気だすよ」
「えらい。何があっても私はあんたの味方だよ」



あかりの言葉に背中をおされて
映画が終わるのを待って
涼太とその女の子が出てくるのを、待ちかまえていた。
「大丈夫だよ」
あかりは、何度も言ってくれる。
友達に、ささえられて決心がついた。
たとえ、浮気でも。
涼太と話がしたい。


時間は、意外とあっという間にすぎて、出口からわらわらと人が出てきた。




「涼太いたよ!」
「うん、行かなくちゃ」