〜*伊吹side*〜


凛花さんに知られてしまった。


いつかその時が来るのは分かっていたのに。



もっと早く自分の口から伝えるべきだった。
後悔しても、もう遅い。



あの日から凛花さんに連絡しても
返事は返ってこず、


直接会ってちゃんと話したいけれど、
仕事が立て続けに入っていて食堂にも行けていない。



咲さんが凛花さんに俺のことを明かそうとした時、
咄嗟に、

アイドルだって知られたくない。

って思いが出てきたのはきっと
こうなることが想像できていたから。



俺の思い過ごしでなければ、
凛花さんは少しずつ心を開いてくれていた。



アイドルではない俺を。
ファンのみんなが知る画面の中の、キラキラしてる時の俺じゃなく。



素の加野伊吹を信頼してくれていたのに...


これじゃ嘘ついたのと同じだ。



「...いぶき!おぉーい、伊吹!!」


はっ、と我に帰ると、

「お前、心ここに在らずって感じだな。大丈夫か?色々あるのは分かるけど仕事に私情は持ち込むなよ。」


新から厳しい声。
1番の俺の理解者だから話してなくても全てお見通しだ。


「っっごめん。ちゃんと集中する。」


今の俺はリーダー失格だな。
せめて仕事中は...

頭の中から中々いなくなってくれない凛花さんを追い出して、何とか集中した。