佐藤 VS 佐藤


アイツは、相変わらず机に伏せたままで表情は見えない

…けれど、笑ってはいないと思う。
たぶん―…いや、絶対。


アイツの冷たい表情に言葉を失い、俯いたままだったあの女の子の表情は見えないけど、
かすかに肩が震えているのがわかった。




「大丈夫だって!!行成が朝機嫌悪いのなんていつものことだよ!」

「でも…」



さっき謝っていた子は、今はもう落ち着いたらしい。

必死に隣の女の子を慰めていたけれど、
その会話を聞きながら、「違うよ」って思った。

確かにアイツは、朝は普段の2割増しで機嫌悪い。
他の人から見たら、「いつも」と何ら変わりなかったのかもしれない。

…けど。


(絶対、違った。)


会わなかった期間があるのを、忘れたわけじゃない。

『誰よりもアイツのことをわかっている』なんて、
おこがましいことを言うつもりはないけれど。


まだランドセルを背負っていた時から、アイツのことは知ってるはずなのに、
あんな顔は見たことなかったんだ。