沢山遊んでから、ようやく帰ることにした。
まつりは相変わらずぼくを抱き抱えようとする。
なぜ、そんなにだっこしたがるのだ。
「なぁ」
隣を歩いているまつりに呼び掛けてみることにした。
「んー?」
のんきに、目を細めながら風を受けるそいつのそばに、近寄る。
「あの……ぼくを、抱えたいの?」
「気持ち良さそうだったから」
「は?」
よくわからない答えが返ってくる。なんだ?
「痛くない?」
「何が」
「身体」
「あ、遠出したからってことね。まだ、平気。帰ったらどうかわからないけど」
「夏々都は普段あんまり、意識的には甘えてくれないから。沢山触れられて嬉しかったんだよ」
「ん?」
「だから少しやり過ぎたかなって。きみは、痛みがあまりわからないだろ」
そういえば少し、腰が重たいとは思ったが、遠出したらそりゃ疲れは来るのだ。
「普段からもっと、甘えて欲しい」
「……?」
「まだ、わかんないか。ふふ」
まつりは一人で納得して、そして微笑むから、わけがわからない。なにがわからないんだろう。
「迷惑をかけたくない」
「全く迷惑じゃない」
「特待生になったら授業料が少し少なくなるから。せめて」
「きみは」
「?」
まつりは、まっすぐにぼくを見つめていた。空は少しずつ星が出始め、閉館のアナウンスが流れてきている。
「きみはちゃんと、生きてもいいんだよ」
よくわからなかった。
首を傾げていると、まつりは切なそうに眉を寄せる。でも。
「ぼくは――まつりだけが大事なんだ。だからそんなことを言わないで欲しいよ」
寂しくなるから。
全てがまつりの愛情で上書き出来る領域なら良かったのに。
「寂、しい」
まつりの上着の裾を掴む。
「ん?」
そいつは、穏やかな顔でぼくを見下ろしていた。呼吸ができなくなりそうな苦しさを噛み締めて息を吸い直すと、言う。
「寂しい、から……ずっと、居て」
最近改めて、わかったんだ。ぼくの居場所はまつりのそば――この場所でしかないって。
「ぼくも……誰かに頼まれたって二度と、別の場所になんか行くもんか」
まつりと離されて箱のなかですごした日々はもはやトラウマだった。隔離も別離も、こりごり。離れたくない。
誰かに未だに腕を引っ張られるのなら、死んでやる。エリさんの面影をぼんやりと思い出す。あの場所には、もう戻れない。
まつりと一緒に屋敷の来賓館に行ったときにも、改めて実感した。
あれからコウカさんや、透さんは、自分のところに住んでもいいと言ってた。
けれど、あそこにはぼくの居場所は無かった。
「だから。行か、ないで……」
「夏々都」
まつりは、珍しく、真面目なトーンでぼくを呼ぶ。
「……っ」
泣きそうになる。
でも、そばに居て欲しい。
「目を閉じてて」
囁かれた優しい声。
忘れ、られたく、ない。まつりの、記憶のなかにずっと――
声を聞きながら、苦しくなって、でも、今を感じたくて、ぼくは、ゆっくりと目を閉じた。



