コンビニに寄って買い物した後、ホテルの部屋に戻ってから、サンドイッチやおにぎりを食べた。
(レストランは明日だ)
空腹が満たされて、なんともいえない幸福感とともに、どっと、疲れが押し寄せる。
あとは、眠るだけ。
しかしベッドに身体を埋めてまどろんでいると、相変わらず、まつりが無邪気に被さってきた。
「ま、まつり、さん」
どうリアクションすべきかわからない。意識しまくりで挙動不審なぼくに、まつりは優しく笑いかけて、見つめてくる。
「大丈夫、痛いことは、しないよ」
「ん……」
ちゅ、と耳のそばに口づけられて、ふにゃっと力が抜ける。
このまま、だと、流されそうだ。
「まつり――だから。だから、こう、いう、のは……恋人とかっ」
ぼくは朦朧とした意識の中で、とりあえず、良識ある言葉をかけるが、まつりは聞いていなかった。勝手にパーカーを脱がせ、シャツのボタンをはずし始めている。
「も……だから!」
「いやがるふりでしょ?」
まつりは、不思議そうにぼくに囁く。
どんどん、変な気分になってくる。
「本当に――される、の」
「暇だし。夏々都は期待してる」
「……そんな理由で、いいのかよ」
「夏々都にだけ適用します」
まつりは、ぼくを愛してるからとか、そういうわけではない。
人間の身体に、単に好奇心があるだけ。
ぼくが、まつりに特別なのは、特別だと思うけど。
ただ、特別だけど、恋愛感情はないってだけ。
……この辺、説明が難しい。
ときめいたりは、しないのだ。まるで、自分の一部みたいに。
相手を自分だって思ってる。
だから、怖くない。
他人じゃない。
恋人でも友人でも家族でもない。
でも、まつりだから――
「……ん」
ぼくは身体の力を抜いて、姿勢を楽にする。
「だったら、早く」



