「…先生、全く分かりません。」



手を挙げながらそう答えると、クスクスと笑われた。


先生は普通ここで笑ったりしないから、真留君は先生にはなれないね。



「えっとここは「紫波君っ、」



廊下から聞こえた女子の声に、真留君と同時に視線が向いた。


見ると、同学年の子が照れたように立っていた。


あ、これは告白だ。


そう察したわたしは真留君に声を掛けた。



「もうちょっと考えてみる。行って来て?」


「ごめん。すぐ戻るね」



伊達メガネを外しながら笑顔を向けた真留君に頷いて見せると、ノートに視線を落とした。


考えてみる、なんて言ったものの、その気はさらさらない。


なにして待ってよう?と呑気にそんなことを考える。