────
誰かに呼ばれた気がして、そっと目を開けると、白衣を着た女性の先生が立っていた。


あ、そういえば保健室で寝てたんだっけ?



『おかげさまで良くなりました。ありがとうございました。』


先生に感謝を述べて、三階の自分の教室を目指して歩きだす。

それにしても良く寝たなー。



そこの角を曲がれば階段があって、昇ればすぐ教室だ。

公民の授業のノート、紗季に見せてもらわないと。



あ!…そう思った時には遅かった。

誰かにぶつかってしまったみたいだ。

ドミノ倒しの積み木のように、私の体は簡単に倒れた。



目を開けると…

整った顔立ちの男の子がこちらを覗いていた。

あれ?これって…?



[あ、ごめんなさい!大丈夫ですか?]

『だ、大丈夫です…』


動揺して言葉につまった。

その男の子は、夢で見たあの子だったから。



その後は夢と同じように、怪我がないか聞かれた。

夢ではこのシーンはこれで終わりだったけど…?


[ホントにごめんなさい、前見てなくて…
あ、同級生ですか?名前聞いても?]


なんで同級生って分かるんだろう。

あ、そういえばうちの学校、制服のワンポイントの色が学年色だった。


『名前は、六花です、漢数字の六に花…[ふっ]

なぜか彼は突然笑った。

『へ?』

[いや、名前聞いて漢字まで説明されるとは]




顔をくしゃっとさせて笑う姿はどこか可愛らしさを感じさせる。


何だろう?初対面のはずなのに仲良くなれる気がした。



『あなたこそ、名前は?』

彼が口を開いた。彼の口から発せられた名前は、間違いなく私が知っていた名前だった。

「いつき」



ミンミン蝉の声がやけに頭に響いた。