本当は、体調なんて悪くない。

沙季の言葉を否定するべきだったんだろうけど。

せっかくだし、ちょっとサボっちゃおうかなって。

次は公民の授業だから、どうせ教室にいても寝てるだけだし。



たまには良いよね

言い訳とも取れる言葉を自分にかけながら、保健室の扉を開ける。

『失礼します...ちょっと頭がぼーっとして』

一応熱を測るようにと、最新型の体温計を渡される。


36.6℃。至って平熱。でも。

『次の時間だけ、ここで休んでいってもいいですか?』


中学の時も優等生の部類だった私にとって、仮病を使うなんて初めてのことだった。



でも、白衣を着た、優しさを具現化したような雰囲気の先生は、すんなりと信じてくれた。


気づかないフリかもしれないけど。


とりあえずカーテンを閉めて、ベッドに横になる。


保健室独特の白く柔らかい布団に包まれて、自然とまぶたが閉じた。