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「六花?聞いてる?」



あ、ボーッとしてた。



『あー…ゴメン、何て?』

「やっぱり。これだから六花は彼氏が出来ないんだよー。」


『それとこれとは関係ないでしょ。』


幼い頃から変わらず、何か考えていると、周りの話が聞けなくなる私。

さっきから目の前で、新しく買った文房具について語っていた沙季の言う通りだ。



確かに彼氏いない歴=年齢だ。だけど、この癖はたぶん治らないし、治ったら彼氏が出来るという確証もない。


「それにしても今日は一段とボーッとしすぎじゃない?熱でもある?」


紗季が心配そうに私の顔を覗き込む。


『そうかも。ちょっと保健室行って休もうかな…』


「先生には言っとくから」


『ありがとう。じゃあまた』



教室を出て、暑苦しい廊下に出る。

校庭から蝉の鳴き声が耳に突き刺さってくる。

先週までは一切聞こえなかったのに。夏が押し寄せてくる怖さみたいなものを勝手に感じてみる。