もう、恋なんてしない

「あ!結衣~!」

後ろから声をかけてきたのは、結衣の彼氏・関口 琥太郎(せきぐち こたろう)くんだ。

「こたくん!おはよ~。今日は珍しく早いじゃん」

「うん!結衣に会うために、早起きして、ちゃーんと準備してきたんだ~」

「嬉しい!こたくん、ありがと~」

朝っぱらからイチャイチャしだす二人。

琥太郎くんこと、こたくんは可愛い系の男の子。でも、成績優秀で運動神経もすごい。結衣はそんなこたくんにあたしはお似合いなのかな?って笑ってた。

「おーい、お二人さーん。イチャイチャすんなら廊下でやってこーい」

「丈!冷たい!」

「まあまあ、結衣ちゃん。俺が英語、教えてあげるからさ」

「ホ、ホント?ありがとう!こたくん!」

二人は仲良く、こたくんの席に行ってしまった。

「まったく…あの二人、イチャイチャしやがって。非リアの俺たちに喧嘩売ってんのかよ」

「まあまあ。仲が悪いよりも良いじゃない?丈も早く彼女作ればいいじゃん」

「やだ。俺は楓に彼氏が出来るまで非リアでいるって決めたんだ」

「あはは。私は、彼氏なんて作る気ないよ?」

「……そっ、か」

「…よし!英語の勉強!頑張ろうか」

「お、おう!平均よりも上とってやるよ!」

丈がこんなに私に優しいのには理由がある。それは、

「楓?これはどういう意味?分かんねー」

「あ、ごめん。どこどこ?」

「ここ」

丈に英語の訳教えて、運悪く朝読書のチャイムが鳴ってしまった。

「じゃあ丈。後は自分で復習ね」

「りょーかい。頑張るわ」

丈は私の席の隣に座った。私は朝読書用の本を取り出した。
私の気に入っている本だ。タイトルは『君へ』。世界観に惹かれて、衝動買いをした。

読み更けていると、丈が机をコンコンとシャーペンで叩いてきた。

ノートを取り出して、静かに筆談を始めた。

[ここの翻訳って何て言うの?]

[ここは、あなたが電話をくれたとき、私は庭にいました、かな?]

[流石楓。ありがと]

筆談を終わりにして、それぞれの作業に集中した。


「起立、礼」

朝のHRが終わって、私と丈と結衣とこたくんで英語の復習をした。

そして、無事に英語のテストが終わり、一息ついていた。

「うは~、一時間目から英語のテストなんて~。あーもーなーんもしたくなーい」

「それな~、俺は寝て~」

結衣と丈は机にぐったりと倒れこんだ。

「そんなに?こたくんは?どうだった?」

「俺は百点だったよ。結衣ちゃんは八十四点だったよ」

「げー。マジ?」

「丈は何点なの?楓?」

「丈は六十八点だよ。ギリギリ平均点越えたって感じ」

「楓は九十八点。スペルミスで」

「あれは結構私でも堪えたよ。もうちょっとで百点だったのにさ~」

四人で雑談をしていると、

「星名さん、いるかな?」

教室のドアのほうに一人の男の子がいた。確かB組の学級委員くんだ。

「星名なら、私だけど…」

「ごめん星名さん。ちょっと放課後いいかな?」

「え?いいけど」

「ありがとう!じゃっ」

例の男の子はタタッと走り出してしまった。

「ちょっと楓!あの男子、成績優秀な男子でイケメンって聞いたことある!あたしでもかっこいいなって思ったもん!」

「結衣ちゃーん…」

「もちろん、こたくんのことの方が好きだけどね~」

「結衣ちゃん!」

またイチャイチャし始めた(笑)。

「楓」

「ん?」

丈が険しい顔で私の顔を見ていた。

「あいつんとこ行くの?」

あいつって、あの男の子のことだよね。

「そうだよ。一応呼び出されたし」

丈が少し傷ついた顔をした。どうして?

「楓はあの男子にOKするの?!」

「OKって?」

丈から視線を外し、結衣を見た。

「もー。付き合うかどうかよ。ほーんと鈍感なんだから~」

「……いやいや、OKもなにも話したこともない男の子にOKするわけないじゃん」

「まあ、だよね~」

話したこともない相手に告白OKするなんて、普通に考えてあり得ない。

特に私の場合は。


──あっという間に放課後になった。

私は教室でB組の学級委員くんを待っていた。

「星名さん!」

振り向くと、学級委員くん(名前は染谷くん)が肩を上下にしながらドアの前にいた。

「染谷くん。大丈夫?学級委員の仕事の方は?」

「うん。大丈夫だよ。ちゃんと終わらせてきたし。心配してくれてありがとう」

「ううん。別に…」

染谷くんは、顔を赤らめ、うつむいた。

「で、染谷くん、話って」

「星谷さん!俺、俺、星名さんのことが好きだ!」

何?と言おうとした瞬間急にコクられた。

「……は?」

「星名さんは、俺らが入学式のとき、俺、お腹下して、うずくまってたんだ。そしたら星名さんが助けてくれて…」

あぁ。思い出した。廊下にうずくまっていた男の子がいたことを。

「保健室まで付き添ってくれてさ、入学式が始まるのに、俺の側にいてくれてさ、超嬉しかったんだ。俺は星名さんにそんときに一目惚れした」

「……」

「だから、俺と、付き合ってください!」

染谷くんは、私に九十度の角度でお辞儀した。


「……私は──」


──。
「えー?!断ったの?」

「うん。私には勿体ない人だったから」

「そ、そっかぁ」

私は、染谷くんの告白を断った。『ごめんなさい』の一言で。
染谷くんは私にとことん断った理由を聞いてきた。自信があったんだろう。でも、私は染谷くんに『ごめんなさい』の一言で終わらせた。

「楓はいつになったら彼氏が出来るの~?早くダブルデートしたーい!」