色素の薄い吉田君の瞳が私を覗き込んでくる。せっかく落ち着かせた心臓が爆音で騒ぎ始めた。ドコドコ激しいダンスを踊るような鼓動で、全身循環はいいのに頭が働かない。自分でも答えが分からないのに、目の前の吉田君は答えを求めている。優しい目なのに視線が鋭い。私は吉田君のオデコを見ながら答えた。

「いないよ」
「……ふーん」

 若干訝しげな視線を投げられたけど、納得してくれたようだ。聞いてもないのに吉田君は「俺はいるよ」と教えてくれた。

 まぁ高校2年生だし、好きな人くらいいるだろう。分かっているけど、急に体温が下がった感覚がした。

 吉田君に、好きな人。それはきっと、私ではない。そっか。吉田君、好きな人いるんだ。

「……誰か聞いてもいいの?」

 何気なさを装って聞いてみる。声が震えなかったので大丈夫だと思う。

 吉田君は真っ直ぐ私を見つめた後、自分の人差し指を口元に持っていって言った。

「まだ秘密」