一緒に保健室を出てから、私は吉田君に聞いた。

「吉田君、サッカー部は大丈夫なの? なんなら私ひとりでも大丈夫だけど……」

 すると吉田君は「なんで?」と悲しそうな顔をした。

「俺は委員会の仕事も責任もってやるよ。顧問にもちゃんと言っておくから大丈夫。一緒にやろう」

 焼けた肌がサッカーを一生懸命やって来たんだろうなと思わせる。責任感の強さも滲み出てて、カッコいいなと思った。そんな彼に失望されたくないなと思ってしまうのは、なぜだろう。

「うん。じゃあ明日からよろしくね」

 バイバイ、と手を振って吉田君は靴箱の方へ駆けていく。

 廊下の窓から沈みかけた太陽のオレンジ色が入って来て吉田君の背中を照らした。大きくて頼もしい背中。その背中だけでもドキドキするのに、明日から面と向かって作業できるのだろうか。

 不安がありつつも口元はニヤケてしまう現象の名前を、私はまだ知らない。