この学校では図書委員は『図書だより』、美化委員は『美化だより』を発行する。それと同じで保健委員も『保健だより』を発行するらしい。保健室の前に掲示物が貼ってあるのは知っていたけど、立ち止まって読んだことはなかった。そもそも保健室の前を通ることがない。ありがたいことに病気やケガとは無縁の世界で生きている。

「内容は来月体育祭があるから、ケガには気をつけましょう、みたいな注意啓発でいいよ」
「分かりました。期限はいつまでですか?」
「来週の水曜日までで。放課後、ここに来て作ってくれたらいいよ」
「なるほど。分かりました。望月は大丈夫?」

 しっかりしている吉田君が小川先生とやり取りしてるのをただ傍観していただけだったので、急に振り返って目が合った時、心臓が飛び出るかと思った。色素の薄い茶色い瞳。綺麗な色でつい見惚れてしまう。

「望月?」
「え、あ、うん、大丈夫! 期限は1週間ってことだよね?」
「そう。じゃあ明日の放課後からここで作ろうか」
「うん、そうしよ」

 2人はしっかりしてるから任せても大丈夫そうね、と小川先生は微笑んだ。雰囲気が優しいので、もし怪我をして痛い思いをしていたとしても先生の顔を見るだけで痛みが少し和らぎそうだ。

 つられて笑顔を向けたけど、よく考えれば吉田君と放課後毎日一緒にいるということか。え、吉田君は大丈夫なのかな。確かサッカー部だったはずだ。