「なぁ、望月」
「うん?」
「あの、さ……ちょっと、聞いて欲しいことが、あるんだけど」
「?」

 珍しく歯切れの悪い吉田君。首を傾げると、綺麗な瞳と目が合った。

「俺、望月のこと……」
「先生……ちょっとベッド貸して……」

 ガラガラ、と力なくドアが開いた。同時に1人の男子生徒がフラフラした足取りで保健室に入ってきた。その顔に見覚えがあったので思わず駆け寄った。

「東川君? え、どうしたの? すごくしんどそうだけど」
「望月……? あ」

 同じクラスの東川君はちょっと顔を上げるとすぐふらついて倒れかけた。

 危ない!

 受け止めようと両手を広げると、私の前にたくましい腕が現れた。そこへ東川君がもたれ掛かる。

「あっぶねぇ〜……望月とのハグ、東川に持っていかれるところだった……」

 ボソリと呟いた吉田君の声は、近くにいた私の耳にしっかりと届いた。その意味が分からないほど、私は鈍感ではない。

「あれ……吉田? 先生は……?」
「ちょっと席外してる。それより東川、大丈夫か? お前めっちゃ熱いぞ」

 とりあえずベッドに寝かそうと、私は掛け布団をはぐって準備する。吉田君は東川君に肩を貸してゆっくりベッドに近づいた。

「悪いな吉田……あと望月もありがと」

 横になった吉田君に布団を掛ける。顔が赤い。かなり熱があるようだ。

「吉田君、そこの引き出しに体温計が入ってるから取ってもらってもいい?」
「引き出し? あぁ、コレか。はい」
「東川君、コレ、脇に挟める?」
「うん……」