高校に入ってから吉田君とは2年連続同じクラスになった。朝、顔を見れば「おはよう」と挨拶するし、放課後も見かけたら「また明日」と手を振る。普通のクラスメイトと変わらない関係だけど、少なくとも私は吉田君のことを気にしていた。目で追ったり、声を拾ったり、それが『好き』ということなのかどうかはよく分からないけど、吉田君のことを考えている時間は、少なくないと思う。

 吉田君はどっちかというと大人しいタイプで、お笑い芸人でいうところの冷静なツッコミ役という感じだ。誰かがボケれば「そうじゃないだろ」と優しいツッコミを返す。クールというのともまたちょっと違うんだけど、元気すぎるムードメーカーよりも、落ち着いている吉田君のことが私は気になっていた。

「えーと、2年生の保健委員は吉田君と望月(もちづき)さんね」

 とある日の放課後、私は保健室へ来るよう呼び出された。なんとなく保健委員のことだろうなとは思いつつも、呼び出しをされるという経験が初めてだったので少しだけドキドキした。行ってみればなんてことない、やっぱり保健委員のことだったんだけど、後から吉田君が来た時は心臓が飛び出るかと思った。そうだ、そういえば保健委員は吉田君と一緒だったんだ。

 少しふっくらとした養護教諭の小川先生が私と吉田君を交互に見る。2人で「はい」と頷いた。

「3ヶ月に1回、『保健だより』という掲示物を作成してるんだけど、今回は吉田君たちにお願いしたくて」