離婚前提から 始まる恋

「これでも僕、人間観察が得意なんですよ」
「人間観察?」
「ええ」

人間観察に得意不得意ってあるものだろうか?
誰だって少なからず相手の気持ちを推し量ろうとするし、そのためには相手の行動を観察したりもする。
それって、みんながやっていることでしょう?

「こう見えて子供の頃は虐められっ子でしてね、いつも周囲の顔色をうかがうような子でした」
「へえ、拓馬君がねえ」
以外だな。
勉強もスポーツもできていつでも自信満々に見えるのに。

「悩みは誰かに話すとすっきりするものですよ」

確かに、誰かに打ち明ければ少しは気持ちが晴れるかもしれない。
でも、それは今じゃないし、相手は拓馬君でもない気がする。

「拓馬君は優しいから、きっといいお医者さんになるわね」
子供達に慕われる姿が簡単に想像できるもの。

「旦那さんは、優しくないんですか?」
「え?」
危うく持っていたグラスを落とすところだった。

「だってそうでしょ?花音さんは朝からずっと元気がないし、いつもだったらすぐに帰ろうとするのに今日は打ち上げに出てくるし、何かあるんだなってすぐわかりますよ。じゃあ原因はってなると・・・杏さんは理由がわからないみたいでしたから仕事のことではないし、そうなれば旦那さんのことって想像できるじゃないですか」
「それは・・・」