離婚前提から 始まる恋

聞こえてきた話をまとめると、海外からの来客を迎える準備に手違いがあったらしい。
来日予定は3日後。
担当者が日付を間違えたことに気づかず、今日になり発覚した。
三朝財閥が手掛ける商業ビルの関係者らしいから、かなり大切なお客様のようだ。

「ホテルと視察先の手配は俺がするから、移動手段と通訳の手配を頼む。それと、メンバーのうち3人はビーガンだから食事も抜かりなく手配してくれ」
「しかし、今から先方の希望したクラスのホテルなんて」

都内には数えきれないくらいのホテルがあるけれど、頭に高級って縛りを付ければ大抵名前を聞いたことのある所になる。
設備もサービスも最高な分人気もあるし、急に予約をとるのも簡単じゃない。

「いいから俺に任せろ。それより、こんなミスは里佳子らしくないぞ。こんなことがあると今後お前の仕事が信じられなくなる」
「すみません」

落ち着いた口調ではあるものの、私には向けるのとは違う厳しい言葉。
これって、相手が里佳子さんだからなのかな。そう思うと言いようのない寂しさが込み上がる。
やはり勇人にとって里佳子さんは特別なんだ。
どんなに頑張っても、そこに私が入り込むすきはないらしい。