離婚前提から 始まる恋

「花音、勇人さんに聞いたけれど、体は大丈夫なの?」

朝起きて洗面に向かったところで、母が寄ってきた。

「うん、昨日はゆっくり眠ったから気分がいいわ」
「そう、ならいいけれど。無理せずに休んでいなさいね」
「はい」

何だ、勇人が母さんに話してしまったのか。
はっきりしてから自分で話すつもりだったのに。

「花音、こんな所にいたのか。目が覚めたら姿が見えなくて心配したんだぞ」
慌てた様子で、勇人が駆けてきた。

「心配って・・・ただ、顔を洗いに来ただけでしょ?」
「妊娠初期はあまり急激に動かない方がいいらしい」
いつの間に調べたのか、妊娠の注意事項をネット検索して私に見せてくる。

はあー、どうしたんだろう。
いつも冷静な勇人が今日はおかしい。

「顔を洗ったら部屋に帰るぞ。もうじき迎えが来るから」
「はーい。って、迎えって何?」
「実家から車と看護師を呼んだんだ。付き添いがいれば花音も安心して帰れるだろ?」
「え、そんな・・・」

昨日、勇人が乗ってきたのは乗り心地よりも走り重視のスポーツタイプの外車。
当然車内も広くはないし、多少窮屈な印象もある。
だからって東京から車と看護師を呼ぶのは、どうかしているわ。