離婚前提から 始まる恋

「私、妊娠したみたいなの」
「えっ」
ポカンと口を開けて動きが止まってしまった勇人。

やっぱりそういう反応になるよね。
妊娠した本人の私でさえ、病院で聞いた時には同じような顔をしたもの。

「『妊娠したみたい』ってどういうことだ?」
唖然とした顔をしていた勇人が表情を引き締めて私に聞いてくる。

「あの・・・今日行ったのは内科でまだ産婦人科にも行っていないし、市販の検査薬で調べてもないのよ。だからまだはっきりはしないんだけれど、内科の先生の見立てではまず間違いないんじゃないかってことだったの」
「じゃあ早く病院へ行かないと」
そう言うと、なぜか勇人が立ちあがる。

「ちょ、ちょっと待って、今日はもう遅いから明日東京に帰ってからにするわ」
「そんなこと言って、何かあったらどうするんだ?」

何かあったらって・・・
妊娠は病気じゃないし、仮に診察を受けたからって何がどう変わる訳でもない。
今はゆっくり体を休める方がいい。

「明日帰るって言うけれど、車で2時間だぞ。そんなに長い時間車に乗って大丈夫なのか?」
「じゃあ、どうするの?私は安定期に入るまで実家にいろって言うの?」
なんだかとても理不尽なことを言われている気がして、言い返してしまった。

「そんなことされたら、俺が寂しい」
「勇人」
私の旦那様はこんなにかわいい人だったかしらと耳を疑いたくなる。

「とにかく、帰京の手配は俺がするから花音は休んでくれ」
「うん」

そのままベッドに横にされ、私はあっという間に眠りに落ちてしまった。