離婚前提から 始まる恋

「何度も言うようだが、里佳子と俺は友人であり、仕事の部下だ。それ以上の関係はない。俺の紛らわしい言動が誤解を招いたのなら申し訳ないが、そのことは信じてもらいた」

さすがここまでの話の流れで、勇人と里佳子さんが男女の仲でないのは納得できた。

「里佳子と同じ部屋に泊まったことも、2人で食事に行ったこともない。もちろん仕事で一緒に行動することもあるが、それは職務上だ」
「本当に?」
「ああ、神に誓って嘘ではない」

勇人がここまで言うのだから本当なのだろう。
でも、それなら、
「結婚式の日に『選挙が終わったら、遅くとも二年後の結婚記念日には離婚しよう』なんて言ったのはなぜ?」

あの日から、私は勇人が信じられなくなった。
あの言葉がなかったら、私だってここまで思いつめることはなかった。

「それは、花音が親の言いなりになって結婚したことがかわいそうで、きっと花音は無理をしているだろうなと思って出た言葉だ」
「そんな馬鹿な・・・」

いくら自己主張が弱くても、自分の人生を親にゆだねることはしない。
私は私の意志で勇人との結婚を望んだ。
そのことに後悔はない。