離婚前提から 始まる恋

「里佳子もあの性格だから、言葉が強くて周囲と衝突することもあるし、意地悪をするときもある。それを知っていながら何もしなかったのは俺の責任だろ」

長く里佳子さんの身近にいる勇人は彼女の性格まで把握しているようだ。

「本当に、里佳子さんのことが好きなわけではないのね？」
「あたりまえだ」

自信満々に応える勇人だけれど、それにしては疑わしい行動が多すぎる。
私だってただ噂を耳にしただけなら、勇人を疑うことも離婚を考えることもなかった。

「勇人はそう言うけれど、この間の香港出張でも里佳子さんと同じ部屋に泊まったんでしょ？」
「はあ？」
何を言っているんだと勇人が私との距離を詰める。

「だって、あの日は勇人と里佳子さんの二人で飲みに行って、飲み過ぎた勇人を里佳子さんが介抱して、私が電話をしたときには『勇人はシャワーを浴びているところだから』って、里佳子さんに言われたのよ」
そこまで聞けば同じ部屋に泊まったって思うじゃない。

「他には、里佳子に何を言われた？」
「え？」
勇人の顔つきが急に険しくなった気がして、私も何をどこまで話したらいいのかと戸惑ってしまった。