離婚前提から 始まる恋

「旦那さま、勇人さんがおみえです」
風間さんが声をかけてきたのは、それからしばらく後のこと。

「通してくれ」

いつもの通り父が答えて、すぐに勇人が現れた。

「失礼します」
そう言って部屋へと入ってきた勇人は、うっすらと額に汗をかいている。

私が実家に連れ戻されたことを聞いて、慌ててやって来たのだろう。
父さんのことだから強い言葉で叱責したのかもしれないし、もしそうなら勇人に申し訳ないな。
私は一人で色んな事を想像しながら、勇人を見つめていた。

「忙しいのに、すまないね」
「いえ、ご心配をかけてすみません」
ソファーに座わり、頭を下げる勇人。

「それで、実際のところはどうなんだ?君たちは離婚するつもりなのか?」
挨拶もそこそこに、父が本題を切り出した。

さあ、勇人はなんて答えるのだろう。
昨日の様子では離婚自体に乗り気でないように見えた。
里佳子さんのことも「ただの秘書だ」って言っていたから、このままの関係を続けたいと言うのかもしれない。
そう言われたら、私はなんて答えるべきなのだろうか?
もちろん私も勇人の側にいたい。
でも、勇人の気持ちが私のもとにはなくて、ただ世間体だけのために言っているのなら・・・イヤだな。