離婚前提から 始まる恋

「どうぞ、座ってください」
「はい」

そこは、マンションの近くにある小さなクリニック。
院長の名札を付けた若い男性医師は内科と小児科を診ているらしく、待合には親子ずれの姿もある。

「最近ずっと食べられないんですよね」
「はい」
わりと胃腸は丈夫な方だから、こんなに食べられないことは珍しい。

「めまいや吐き気もありますよね?」
「ええ」
さすがお医者さま、まだ伝えてもいない症状まで分かるなんてすごい。

「最近、生理がないのではありませんか?」
「ああ、はい」
でも、もともと不規則だから・・・え?

「あの、先生?」
「あなたが診察を受けるべきなのは、内科ではありませんね」
「そんなあ・・・」

まさに青天霹靂。
想定しなかった私が悪いのだろうとは思うけれど、こんなことになるなんて・・・

「おそらく妊娠初期と思われます。よかったら紹介状を書きますが?」
どうしますかと聞かれるけれど、私の頭が追い付かない。

「すみません、少し考えさせてください」
いくら考えたって事態は変わらない。
それでも、頭を整理する時間が欲しかった。

「わかりました、もし診断書が必要なら書きますので言ってください」
「ありがとうございます」
私はきちんと頭を下げてクリニックを後にした。