離婚前提から 始まる恋

「専務。コーヒを入れましたので、どうぞ」

数日後、いつものように順調仕事をこなした午後。
仕事が一段落したタイミングで、私は尊人さんの前にコーヒーを置いた。

「ああ、ありがとう」

暑い時期でもホットコーヒーを飲むのは勇人も尊人さんも同じで、二人とも濃い目のブラックを好む。

「勇人の会社でも同じコーヒーを注文したらしいね」
「ええ、よくご存じですね」

勇人に頼まれて私が注文した。
でも、何で尊人さんが知っているんだろう。
そう言えば、私の出したコーヒーや紅茶が気に入ったからどこの店で買ったのかって聞かれた記憶がある。
お店の名前を教えたはずだけど・・・

「ちょうど自宅の近くだったから行ってみたんだが、店の人と話をしているうちに『いつもありがとうございます』ってお礼を言われてね」
「そうでしたか」

私が最近はまって通っているのは『コットンハウス』と言う自然食品の店。
小さなセレクトショップに自然素材の雑貨や有機野菜、無添加食品などが並び、お店で簡単な食事も提供している。
それにしても、わざわざ尊人さんが行くなんて思わなかった。
さすがと言うかなんというか、忙しいはずなのにその行動力はすごい。

「それで、どうでした?私はあそこのパンも気に入っていますし、以前から使っていたハンドクリームも国内ではあそこでしか買えないので重宝しているんです」
「僕はランチにベーグルサンドを食べたんだが、美味かったよ」
「そうですか、今度私も頂いてみます」

フフフ。
尊人さんと話していると、友達と話しているみたい。
勇人ともこんな風に話がしたいんだけれどな・・・