「里佳子、余計なことはするなよ」
「それは、その時の状況によります」
「お前なあ」
まったく悪びれる様子のない里佳子を見て、俺は怒りよりも脱力してしまった。

俺も里佳子も理系の人間だ。
メカ好きな俺と、コンピューターに強い里佳子。
俺にわからないことがあれば、里佳子がすぐに調べてくれる。
その速さと正確性はその辺のリサーチ会社の比じゃない。
もちろんそこには『どんな手を使ってでも』って言葉が入るからなんだが、正直助かることが多い。
俺も副社長といえ、ここは本社ほどの規模はない。
MISASAのように優秀な人員ばかり確保できるわけでもないし、そうなれば自分でやった方が早い時もある。
そんな時には里佳子がいいてくれると、本当に助かる。
ただなあ・・・
非合法すれすれのことをするから危なくてひやひやさせられることもしばしば。
もちろん注意はするが、聞くような奴でもない。

「今回の件は俺が何とかするから、お前は何もするな」
「はい」

こうやってしおらしく返事はするんだが、きっと俺の言うことなんて聞かないんだろうな。

「絶対だぞ」
「承知しました」

綺麗な会釈をして里佳子は部屋を出ていった。