亜季ちゃんがいなくなって数ヵ月後、僕たちは無事に進学し高校3年生になった。

僕たちというのは、僕と葵さんの事だ。

僕と葵さんは進学を希望していた為、進学クラスの3組になった。

担任は信じられない事に…

1年2年に引き続き松下だった。

「お待たせ」

「もぉ、おそ~い」

「しょうがないじゃん。松下に捕まってたんだから」

「10分43秒も待ってたんだから…」

「どうしろっていうの?」

「何かお腹空いちゃったなぁ」

「わっ‥わかった。駅前のマックでご馳走するから」

「ハッピーセットでもいい?」

「何でもいいよ」

「今、モンスモーズインクのオマケがついてくるの。確か去年もやってて、亜季ちゃんからサリーのフィギュアをもらったんだ。今度はマイクをあててみせるから」

「そんな事言ったって、そう簡単にはいかないでしょ」

「大丈夫っ。私運がいいから」

「スゴイ自信だね?」

「だって見えてるもの」

「なるほど…そういう事ね」

「それより、もう少しでオマケがなくなっちゃうから急ぎましょう」

そういえば亜季ちゃんは1年前、ハッピーセットを買ってサリーをあてていた。

でも亜季ちゃんは、このキャラクターが特別好きだった訳ではなかった。

「葵さん、このキャラクター好きなの?」

同じ質問を葵さんにもしてみた。

「そんなに…」

亜季ちゃんと同じ答えが返ってきた。

「だったらなんで?」

「そのうちわかるよ。それより、ドリンクはシェイクに変えても?」

「もちろんっ」

僕らは3年になってからも、相変わらず下駄箱で待ち合わせて一緒に帰っていた。

それに以前より、お互い仲良くもなったし距離も縮まっていた。

そして僕は次第に葵さんに心を寄せていったし、日に日に想いも大きくなっていた。

きっと、葵さんもそうに違いなかった。

でも、どちらかが告白して気持ちを伝える事が中々出来ずにいた。

そこで僕は色んなシチュエーションを用意して、告白をしようと計画を立てて実行に移した。

それなのに今日に至るまで“好き”という一言さえも言えなかったのには色んなものに邪魔されてきたからだ。

ある時は、告白しようとすると知り合いに邪魔をされたり…

ある時は、選挙カーが僕らの直ぐ横に止まった為にムードを台無しにされたり…

ある時は、目の前で道に迷い困っているお婆さんがいて、送って行ってあげたりと…

ありとあらゆる手を使って邪魔をされてきた。

これだけ告白の場面を邪魔されると、本当に偶然なのか疑いたくなる。

もしかしたら、葵さんを見守っている能力者の手によるものなのかもしれない…。

でも今日は絶対に邪魔はさせないし、邪魔をされても必ず告白する。

何故なら今日は葵さんの誕生日…

プレゼントも用意してきた。

またとないチャンスだ。