向かい合って座っていた葵さんが、突然僕の隣に座りたいと言ってきた。

「どっ‥どうぞ…」

すると葵さんは、僕の隣に座るなり腕を組み、肩に頭をのせて寄り添ってきた。

心臓が“バクバク”と激しく鼓動し、葵さんにも聞こえてしまうんじゃないか心配になった。

それに、こんな積極的な葵さんは初めてで、どう受け止めたらいいか戸惑っていた。

きっと病院での極度の緊張から開放された事や、夜の月明かりの下で僕に抱きしめられた事で、いつもの葵さんではなくってしまったのかもしれない…。

恐る恐る葵さんを見ると、目を閉じて寝息をたてていた。

あれっ?

もしかして寝てる?

ただ単に眠かっただけのようだ。

試しに体を揺すってみたりしたけど、起きる様子など全くなかった。

相当疲れ切っているのがわかった。

こんなにか細い体で僕が計り知れないくらいの重荷を背負って生きていると思うと、いたたまれなくなった。

葵さんの助けになりたい。

僕に出来る事があるならしてあげたい。

本気でそう思えた。

キィ―――――――――ン

空気が変わった。

あの時と一緒だ。

もの凄い威圧感…

しばらくすると、全く眠くなかったのに突然の睡魔に襲われた…‥

次第に…‥

ねむ…‥く…て…めを……

Zzz…Zzz…‥Zzz……‥



「紺野くん…起きてっ」

誰かが僕の名前を呼びながら体を揺すっていた。

でも、あまりの眠たさに目を開けられなかった。

ここはどこだ?

どこで何をしていたんだ?

確か…‥

そうだ…‥

僕は学校にいたんだった。

学校の教室で授業を受けていたんだ。

そしたら眠くなって、いつの間にかに居眠りをしてしまったんだ…。

という事は…僕を起こしているのは、斜め前の席の仲村…

いつも僕の身近な所にいて、いつも僕に話しかけて微笑でくれる仲村…

僕がどんなに冷たく素っ気ない態度をとっても笑顔で接してきてくれる仲村…

いつしか心を許し、惹かれていた…

何だ…この懐かしい感覚…

現実じゃないのか…

夢なのか…



「紺野くん、起きてっ」

やっぱり誰かが僕をよんでいる。

「紺野くん、紺野くんっ」

ハッ!?

ようやく目を開けられた。

「紺野くん、大丈夫?」

僕は、ボンヤリ霞んでいる目をこすりながら、目の前の人物を見た。

「仲村?」

「こっ‥紺野くん…そうだよ、私だよ」

「仲村っ」

目を見開き、その人を見ると…

「遠藤さん?」