数日後…

千葉が病院を退院し、学校に登校して来た。

まだ足にはギプスがはめられており、松葉杖を使って歩いていた。

「みんな、寂しい思いをさせて悪かったな。でも、もう大丈夫だ。この通りギプスはしているけど何の問題もない。俺っちが戻って来たからには、つまらねぇ日常とはサヨナラだっ」

久しぶりに戻って来たかと思えば、いきなり教壇の上に立って英雄気取りだ。

「おいっ」

「何だよ、うるせえなっ。今いいところなんだよ。だまっ‥」

「うるさくって悪かったなっ」

「せっ‥先生…」

松下はいつものように、千葉の首根っこを掴んで前後左右に揺さぶっていた。

「あと、つまらねぇ授業がどうだのこうだの言ってたな?」

「そんな事言ってませんよ。言う訳ないじゃないですか…」

確かに言ってはいなかった。

「そうなのか?ならみんなに聞いてみるぞ。おいっ、お前ら…千葉は言ってたんだよな?」

「はいっ」

ほぼ全員が、元気にそう答えていた。

さすがっ。

みんなわかってるなぁ。

「そんなぁ…」

「と言う事で、お前は廊下に立ってろやっ」

「先生…堪忍してやぁ〜」

いつもの2組らしくなってきた。

そして、松下も本来の姿を取り戻したようだ。

何だかんだ言っても、千葉はクラスのムードメーカーで、いなくては困る存在だった。

復帰1日目の千葉は充電満タンで、今までのウップンをはらすかのようにハッチャケていた。

でも、いたらいたで結構ウザかった。


帰りのホームルームが終わると、葵さんは千葉の所に行って何かを話していた。

まるで、千葉が怪我をしたあの日のように…。

そして2人の様子を遠目で見ていると、葵さんに何かを言われた千葉は、みるみる表情が曇っていった。

さらに葵さんが何かを話すと、今度は先程とは打って変わって安堵の表情をして笑顔になった。

一体何の話をしてるのだろう?

もしかして、再び千葉の身に何かが起こるというのだろうか?

だとしたら、千葉のあの笑みは…

それから話を終えた葵さんは、何も持たずに教室を出て行った。

すると葵さんを追いかけるように、仲村も教室を出て行った。

何かあるんじゃないかと思い、僕も後を追った。

仲村の後を付いて行くと、下駄箱で運動靴に履き替え、外にある体育倉庫の前まで歩いて行った。