あれから5日が過ぎた。

遥香は未だに眠り続けていた。

遥香の事はもちろん心配だったけど、今日は日曜日で天気も良かったので美咲さんと2人きりで、地元の小学校の裏山にピクニックに行く事にした。

美咲さんは朝早く起きて、昼に食べるお弁当を作ってくれていた。

そして僕らは昼頃を到着予定にして、10時前には家を出た。

それから僕らは1時間半位かけて裏山の山頂に到着した。

道中、獣道のような整備が全くされていない細い道があるだけだったので、歩きづらく足腰にこたえた。

山頂では、草の上にレジャーシートを敷いて、四つ角には荷物や大きめの石を置いて風で飛ばないようにした。

美咲さんが昼食を並べている間、僕は水筒に入ったコーヒーを紙コップに注いでいた。



キィ―――――ン……

「うっ…」

久しぶりの感覚だった。

この耳鳴りと頭痛が起きる時は、大抵過去の葵と繋がる瞬間だった。

しばらくは目を閉じて痛みに耐えながら、その時が来るのを待った。

そして目を開けると、そこにはバースデーケーキと洋服用のキャリーバッグが置かれていた。



プルルルル…プルルルル…‥

スマホが鳴っているので、画面を見るとテレビ電話だったの受話ボタンを押した。

「瑛太、元気?」

「うん、元気だよ」

葵が僕に向かって笑顔で手を振っていた。

葵の背景から、結婚してから一緒に住んでいたアパートだとわかった。

また、家具の配置や画面の片隅に写っているベビー用品から察するに、すでに遥香が産まれた後の頃のようだった。

つまり…葵が僕たちの前から消えてしまうまで、1年をきってしまっていると言う事だった。

そして、この頃になると葵の体は既に限界がきており、ボロボロだったはずだ。

「瑛太…久しぶりだね」

「葵…体は大丈夫?」

「大丈夫だよ…」

「でも、顔色もあまりよくないし、疲れた顔をしてるよ…」

「そんな事ないって…。瑛太も美咲ちゃんも元気そうだね…。特に変わった事はない?」

「ないよ…」

「そっかぁ、みんな上手くやってるんだ。良かったぁ」

「今、小学校の裏山に来てるんだ。良い天気だから美咲さんと散歩がてらピクニックに…」

「そうなんだ…。よく2人きりで出掛けるの?」

「前は3人の時が多かったけど、遥香が大きくなってからは2人きりが多くなったかもしれない」

電話に出た時から葵の様子がおかしかった。

それが何なのかはわからないけど、とにかくいつもの葵ではなかった。