車はETCの改札を抜けると、下り方面の3車線の道路に合流していった。

「何か渋滞しているみたいだな」

「そうね。前が、だいぶ詰まってるみたい。事故かしら?」

「そうみたいだな。さっきからパトカーが頻繁に通ってるからな」

車は次第にスピードを緩め、徐行運転になっていた。

高速道路に入ってから30分くらい経っていた。

僕は父と母の会話を聞いた後、スマホで高速道路の交通状態を調べてみた。

すると、1時間前に無理な追い越し運転が原因で普通車と軽自動車あわせて5台の追突事故が起こっていた事がわかった。

1時間前って言えば18時15分か…

僕が意識を失い目覚めた時間…

もし僕が意識を失わずに、父さんと母さんに直ぐに電話して車を出発させていたら事故現場に居合わせていたかもしれない。

「もしかして…事故が起こるのをわかっていたから、まさおばあちゃんの事を知らせなかったの?」

「たまたまだよ…」

「それに僕が意識を失ったのも偶然じゃないよね?葵がやったんでしょ?」

「そんなことありえないでしょ?」

「葵だったらありえるよ」

「だったら何?」

「ごめん…何もしらないで葵を責めてしまった」

「いいよ、気にしてないし…」

気にしてない?

そんなハズなかった。

だって車に乗ってから、寂しそうな顔でずっと外を眺めていた。

「葵、怒ってもいいんだよ。僕が間違った事をしたら…」

「やだよ」

「どうして?」

「私の能力が原因でケンカしたくない…。瑛太に嫌われたくない」

僕は黙って葵に寄り添い、葵の顔を僕の胸に優しく押しあてた。

「聞こえる?」

「うん…ドキドキいってる」

「どうしてだかわかる?」

「わかんない…」

「葵に恋をしてるからだよ」

「きっと、そのうちドキドキしなくなる」

「絶対変わらない。試してみる?」

「どうやって?」

「多少時間がかかるけど、それでもいい?」

「いいけど…」

「それなら50年後も、今みたいにドキドキしてるか、こうして僕の心臓の音を聞いて確かめてもらえるかな?」

「50年後?一緒にいるかな?」

「絶対いる。いてもらえるかな?」

「えっ…これって…」

「いいよね?」

「はっ‥はい…」

こんな時に不謹慎だと思われるかもしれない。

こんな場所で、良いシーンが台無しだと思われるかもしれない。

それに、世の中の事を何も知らない高校生のガキが何カッコつけてんだと思われるかもしれない。

でも僕には今しかないと思った。

葵の心を救ってあげるのは今しかなかった。

これから僕と葵に起こる未来の事を考えたなら…