「ハイ、チーズ!」

「ありがとうございました~!」

「いえいえ。」

私はダブルピースで被写体となっていた、茶髪ロングヘアーの女性にスマホを返した。

女性は一緒に写った男性に「あとで写真、送りますね~」などと嬉しそうに話している。

二人はもう連絡先の交換をしているようだ。

気が付くと私はイイ感じになった男女ペアの写真を撮る係になっていた。

もうこれで3組目だ。

フリータイム中、ずっと夢中で猫の写真ばかり撮っていたからか、写真を撮るのが好きな人、として周りに認識されてしまったようだ。

首に一眼レフのカメラなんてぶら下げているのが話しかけないでオーラを感じさせるのか、男性からのアプローチはいまのところ一切ない。

男性とマッチングする意思がないとはいえ、この状況はけっこう辛いものがあった。

「はあっ」

ウスイサチじゃなくても壁の花なのは、ここでも同じか・・・。

私は化粧が崩れていないか確認するために、トイレに行くことにした。

女子トイレに入りかけた時、隣にある男子トイレの中から男性の話し声が聞こえてきた。

ねこんかつ参加者の男達だ。

「今回の女子のレベル、低いな~。」

「ほんと、参加費、返してもらいたいよ。」

男性の参加費は4千円だと聞いている。

それっぽっちも出し惜しむなんて、とんだケチ野郎もいたものね。

「しかも女子のほとんどがあのイケメン狙いだし。」

イケメン・・・って和木坂課長のことだよね?

「アイツ、マジなんなの?こんな所に来なくても、あのルックスなら女選び放題だろ。」

「職場に女がいないんじゃないか?」

いるよ!

ウチの職場、三割が女性職員だよ!

でも・・・本当に謎だ。

どうして和木坂課長はこんな所にいるのだろう?

職場ではかなりモテているし、いくら職場恋愛が嫌だからって、婚活パーティなんかに頼らなくても、いくらでもお相手は見つかりそうなものなのに。

するともう一人の男性がチッと舌打ちをした。

「それにしてもあの2人はナイよな。」

「え?誰?あの2人って。」

「ほら、右端に座っていたショートカットのデブと眼鏡のブス。」

「ああ~。首からカメラぶらさげてる眼鏡ちゃんね。」

「化粧濃すぎだろ。ほっぺが赤くてどっかの女芸人みたいだし。」

「あ~確かに!」

「もうちょっと化粧の仕方を勉強してから、出直して来いっつーの!」

そう話しながら男性2人は爆笑し、男子トイレから出て行った。

え・・・?

カメラぶらさげてる眼鏡って・・・ワタシ?

私は慌ててトイレに駆け込み、鏡に映った自分の顔をまじまじとみつめた。

え?私が変身した幸田ミチルって・・・ブス、なの?

・・・・そうか。

化粧しているときにコンタクトを外していたから、ぼんやりとしか自分の顔を認識できていなかったんだ。

いつも軽いメイクしかしたことなかったから、私、やり過ぎちゃったんだ。

途端に、家を出る前の自分を呪いたくなった。

ぐすん。もう、今すぐ帰りたい。

一刻も早く家に帰ってメイクを落とし、布団をかぶって眠り、今日の出来事をリセットしたい。

そう言って泣きたくなった。

どうして私は男絡みになると、こんな不運に見舞われてしまうの?

前世の私はどんなひどい罪を犯したの?

神様、こんな仕打ち、ひどいよ・・・。