暑い夏は冷たい晴に恋をする



次の日、深呼吸をして、予定よりも15分早く図書館に着いた。中に入ると、須磨さんがいた。



「ごめんね。落ち着かなくて早めに来ちゃった。」


いつもと変わらない笑顔で須磨さんが手を振ってくれた。

「昨日はごめんなさい。急に泣き出して。」



「うんん。泣かせるようなことをしたのは僕だからね。夏は謝らなくていいんだよ。」



泣くな私。今日は泣いちゃダメ。無くなら家に帰ってからだって決めてきた。



「あのさ、昨日なんで私にキスしたの?」


須磨さんもこの話だろうと分かってたんだろう。だよね。という顔をして、ゆっくり口を開いた。



「僕は夏のことが好きだよ。」



そんなに驚かなかった。気持ちがないのにキスをするような人だと思ってなかったから。



「ありがとう。でも私、好きな人がいるんです。」


須磨さんは少し困った顔で笑った。そして私の頭を撫でた。堪えきれなかった涙がポツポツの机の上に落ちた。



「うん。そうなんだね。」


須磨さんはハンカチで私の涙を拭ってくれた。



「ありがとう。伝えに来てくれて。でも僕を降ったからにはその人と絶対上手くいってよ?」



いつもの優しい笑顔の中に悲しそうな顔が見えた10分ぐらいだと思う。須磨さんは最後までいい人だった。その優しさを何も返せなかったことだけ後悔して、須磨さんとお別れした。同時に一瀬先生にもう一度好きと伝えよう、と決心した。