暑い夏は冷たい晴に恋をする



「ごめん…やっぱり私は一瀬先生がっ…」



好き、と言おうとした口を大谷くんは人差し指で止めた。



「まだ言わないで。もう少し頑張らせてよ。」



大谷くんはそう言って私の頭を優しく撫でた。お化け屋敷を出たあとは、大谷くんが他の女性陣に呼ばれてしまい、解散することになった。


今日は色々ありすぎたな…。とりあえず、空き部屋にでも行こうかな。使ってない教室があるはずだし。



時刻はもう16時になる。文化祭が終わってしまう…。一瀬先生と回れなかったな。



薄暗くなった外を見て、窓側に腰を下ろした。先生は朱里先生と回ったりしたのかな…。クレープ食べたり、一緒に吹奏楽部の演奏聞いたり。どれも、私が先生としたかったことだ。


文化祭が終わったらすぐに体育祭があるというのに、一瀬先生と楽しみたかったのに。気持ちはどんどん落ち込んでいる。、


「こんなとこにいたのかよ。」



ガラッと空いたドアの方向を見るとそこには大好きな人がいた。


「いっ一瀬先生…」



「お前、俺と文化祭回りたいんじゃなかったのか?」


だって…だってそれは…



「先生…朱里先生と一緒にいたじゃないですか…」



あ?とでも言うような表情をして、教室に入ってくる。




「なんでもないです…。すみません。」



こじつけたように約束させたから、先生は何も悪くない。私が一方的に押し付けたんだもん。一瀬先生の顔を見れなくて思わず俯いてしまう。


「こっち向けよ。何凹んでんだ。」



先生は私の顔をクイッと簡単に上に向けてしまった。向いた時の先生の顔があまりに近くて、昨日のキスを思い出してしまい目を逸らした。


「へっへこんでないですよ…何言ってるんですか」



目線は外しつつもヘラヘラ笑ってみると先生は少し眉毛を下げて、私の顔から手を離した。



「じゃあなんで来なかったんだよ」


来なかった?何の話?約束したのにってこと?でも先生は嫌だったんだよね?行かなくて正解なんじゃ…


「俺、お前のこと待ってたんだけど」



待ってた!?私を?でも先生は…



「朱里先生は…?一緒に回ってきたんじゃないの…?」





先生は、腑に落ちたように鼻で笑った。鼻で笑うのはどうかと思いますが。でも、その後は優しい顔で私の隣に座って、頭を撫でてくれた。


「あのなぁ何を勘違いしたのか知らないけど、俺はずっと準備室にいて、色んな先生や生徒が様子を見に来てくれただけだ。誰とも回ってねぇよ」



勘違い…?ずっと待っててくれたの…?私やらかしてるじゃん。先生に無理強いして、挙句の果てにその約束をわたしがやぶるっていう、最低過ぎない?


「ごっごめんなさい…!今から行こ!ね!」


立ち上がって行こうとする私の手を一瀬先生が掴んだ。


「まぁ落ち着けよ。もう文化祭終わっちまってるぞ。」