「何を企んでいるのかな?愛するレティ」


私も学院に入り、3年半が過ぎた。もう少ししたら、聖女召喚の儀式がある。


学院の帰り、毎日公爵邸に送ってもらう道中。

馬車の中で、何故かいつも隣に座るウィンが、更に私の腰を抱き寄せて、美麗な顔を寄せてきた。

もう長い付き合いだけど、このキラキラフェイスには本当に慣れないんだってば!

「何の事ですか?私にはサッパリ分かりません」

言いながら、彼の胸を押す。
———びくともしない。

18歳になったウィンは、もう大人に近い体格で。
剣術も更に研鑽を積んで、今では実力主義の第二騎士団に混じっても遜色ない程。

つまり、私と身体能力には決定的に差があるのだ。
その代わり、魔法の実力は私の方が上だけどね!

しかし、こんな狭い空間でぶっ放す訳にはいかない。
……困った。


「最近、よく隣国に行くし、隣国のワルター王子とよく会ってるでしょう?」

「あれは商談ですよ⁉︎
ほら、うちの領地のワインを凄く気に入ってくださって、たくさん注文してくださってるんです!」

私は、必死に言い募った。


実は、ワルター王子には、さりげなく留学の根回しを入れているところだ。
ここで変な横ヤリを入れられる訳にはいかない。


「ふうん…」

あ、久々の真っ黒な微笑みだ。
これはマズイ。
私は羞恥心をグッと抑えて、ウィンの胸に両手と頬をそっとつけた。

滅多にしない行動に、流石のウィンもピキッと固まる。

「もうすぐお誕生日ですね、ウィン。
何か欲しいものはありますか?」


元々聞きたかったことだけど、今がその時‼︎

「そんなの、決まってる。
毎年言ってるでしょ、レティが欲しい。
正式に『筆頭候補』を無くした婚約者になってよ」


——ああ、言われると思ったけど、やっぱりか。
私は、いつもと同じ答を返す。

「そのプレゼントは、来年の、ウィンの19歳の誕生日にしましょう」

「またかい?
……じゃ、来年は必ずだよ?約束したからね?」

溜息を吐きつつ、彼は答える。
———でも、私は『知っている』の。
このおねだりも、今年が最後。

私は寂しさを押し殺して、ウィンに艶やかに微笑んでみせた。

「ええ、必ず」



———ごめんなさい、嘘をつくわ。

でも、貴方がこの約束を忘れるのだから、お互い様ね———