———スキャンされたのだもの、ボンヤリとした願いでも分かってしまうよね。
そう、私は、できたら何度でも破魅の宝玉を使いたいと思っている。
私が知るのはミクだけだけど、他にも能力のせいで苦しんでいる人がいるかも知れない。
正当な理由と、本人の意思によって、誰でも能力を外せるようになればいい。
管理は、皇家なり神殿なり、もしくは両方で一緒に行えれば。
自分の考えに沈み込んでいたらしい。
私を呼ぶ声に、意識を浮上させた。
少し高い方の、少年の声。
『何度も使おうとすると、それだけ僕たちの”力”が必要になる。
兄さんと話したけど、マーガレット、僕たちを子どもとして受け入れることはできる?』
「え?」
疑問の声を発した私に、低い方の声が答える。
『僕たちを、僕たちの”魂”を宿し、君たちの子として産むと、君たちの血統に僕たち竜の力の一部が受け継がれるようになる。
竜の力は、宝珠を働かせるエネルギーになる。
つまり、君たちの一族は、宝珠を使い続けることができるようになる。
そういうのはどうかな?』
私は、絶句した。
——何、このスケール!
私が!竜の!お母さん⁉︎
軽くパニックになっていると、銀色の竜が顔を寄せてきた。
上目遣いで見上げられ、少し高い方の声で言われる。
『お母さま、僕たち、お母さまの子になりたい』
いやーーー‼︎
可愛い‼︎いかつい”竜”が可愛い‼︎萌える‼︎‼︎
興奮していると、ふと視界の端に、何かが見えた。
そちらを向くと、少し離れたところに、ここには居ないはずのウィンが見えた。
今より、少し大人っぽくなった感じ。
何年か後の彼なのだろう。
驚きつつ眺めていると、ウィンが優しい笑顔を浮かべて跪き、いつの間にかいた小さな2人の男の子を抱き上げた。
男の子たちは後ろ姿で顔は見えないが、ウィンはとても幸せそうに笑って何か話しかけている。
——うん、きっと幻なんだろう。
皆が見ていたのも、このくらい現実感があったのかと、ちょっと背筋が寒くなるくらいリアル。
でも、それは、私にとって完璧な『しあわせ』そのものの光景で。
この未来は、きっと間違ってないと確信出来るほど完璧で。
この完璧さこそが、ミクの孤独も後ろめたさも、きっと打ち破ってくれる。
皆で、幸せになれる。
そう、思った。
「私からお願いしたいわ。
2人とも、協力していただけるかしら。
——それに、何より。
あなた達を、お母さまとして幸せにしたいわ。家族で幸せになりたいわ。
私とウィンのところに、来てくださるかしら」
『もちろん』
『喜んで』
竜達は、微笑んで了承してくれた。



