その制服に、懐かしさで涙が出そうになった。
私が通っていた高校の制服だ。
同窓生が亡くなったのか、早すぎるなぁと思っていたら、女の子が身じろぎした。
目を覚まして、ガバッと起き上がる彼女。
「あ…えっ?私、死んだんじゃ…?」
私は、そっと近寄って、彼女に微笑んだ。
去来する私の胸の痛みよりも、まず。
同郷同窓の彼女を、早く安心させてあげたかった。
「初めまして、聖女様。
ご気分はいかがですか?」
「聖女⁉︎なっ、何⁉︎」
オロオロと周囲を見回す彼女を、私は隣室へと導く。
彼女から漏れ出る膨大な聖なる魔力が、この召喚が成功であることを告げていた。
「色々と聞きたい事がおありでしょうが、ひとまず、隣のお部屋で座ってお話しませんか?
私は、マーガレットと申します」
「…ミクです。平井 未来」
「ミク様…可愛らしいお名前ですのね。
こちらへどうぞ」
柔らかく微笑む。
それが功を奏したのか、ミク様は段々と警戒を解いていった。
男性達は、会話を私に委ねたようだ。
同じ部屋には居るが、距離を取ってこちらの様子を伺っている。
まず私は、ミク様の話を聞いた。
どういう状況でこちらに来たのかを。
彼女は、道路に飛び出した子供を庇って、車にはねられたそうだ。
———優しい子、なのね。
「痛みなどありますか?」
多少回復魔法も使えるので、聞いてみると、ミク様は首を横に振った。
「いえ、それは全然…
それより、今のこれはどういう状況なんですか?
皆さん、コスプレ…?」
私は思わず吹き出した。
コスプレ、久しぶりに聞いた。
「いいえ、これはこちらの『国』の服ですの。
貴女の居たところにも、似たようなドレスがありましたでしょう?」
こんな会話を皮切りに、ミク様は色々と疑問に思ったことを聞いてきた。
そして、こちらの状況と、ミク様の『魔獣の大規模侵攻を抑える能力』について、説明する。
途中から、神官長にも入ってもらって、今後のことを話していく。
———とても、賢い子だ、この子。
自分の死を受け止め、異世界転移とかいう非常識を、早々と受け入れている。
状況説明が終わる頃には、私に出来ることがあるなら、と、神殿での訓練にも前向きに取り組む姿勢を見せた。
——いい子だ、間違いなく。
『魅了』なんて、むしろきっかけになるだけかも知れないね。
そうして、エドウィンは彼女に心から惹かれていく。
そういうものなのかも知れない。
——その時の私は、何故かそう確信して。
無理矢理に変えられるかも知れないエドウィンの心や意志について、想いを馳せることが出来なくなっていた。
彼女から漏れ出る聖なる魔力に、酔っていたのかも知れない。
ただただ、この、懐かしい異世界から来た少女の、味方でいようと思った。
最初は神殿で修行するが、スタンピードが終わってからは私の家で、家族になると伝えた時の心から安堵して喜んでくれた貴女の表情。
私の大好きなこの国と、民を守ってくれること。
全てに、感謝して———