ボクと理央の出会いは高校1年生の時
同じクラスで

理央はボクのことを全く覚えていなかった


え、マジ?
クラスメイトなんだから名前ぐらいは…

覚えていなかった


ボクも理央のこと
その頃はまだぜんぜん意識していなくて

意識というか
同じクラスにいても世界が違う人だと認識してた

楽しそうにしてる女子のグループ
教室の宇宙みたいな所

ボクが着地することはない星


ボクシングの大会で理央が優勝して
ステージで表彰された時は尊敬した

女子高生を楽しんでるだけの人かと思ってたけど
ちゃんと努力してる人だったんだ

やっぱりボクとは違う世界の人なんだ…とも
強く実感した


理央を好きになったのは
3年の夏休み明け

始業式の日だった


台風の影響で強風が吹く登校時

理央のスカートが捲れて
ボクは理央のパンツを見てしまった


それで好きになったわけじゃない
だったらキモい


その後
ボクは理央の美脚に蹴られて

気付いたら保健室だった


その日ボクは理央と初めて話した

ボーイッシュだけど
女の子らしいところがいっぱいあって

笑うとめちゃくちゃかわいいし
話してるとなかなか楽しかった


そもそも学校生活で
そんなに女子と話すこともなかった

話し掛けられても
どちらかというと苦手で逃げ腰だった


あの日
ボクが理央のパンツを見た日

理央はボクに
誰にも話したことない話をしてくれた


理央は男性が苦手らしくて
その経緯と過去のトラウマ


なんでボクに話してくれたのか…


それはボクを男として見てないから?
それともボクを信用してくれてるから?


どちらでもなかったのかもしれない


理央は最後に
その日の事は全部忘れるようにボクに言った


理央の中では
ボクにパンツを見られたことは
きっと消してしまいたかったと思う


理央はボクの存在ごと消してしまったかのように
次の日からボクのことを無視した


もともと名前も覚えてないくらいの存在


理央の中にボクはいなかった


余計なことで
理央の中にできたボクという存在


ボク自体もきっと理央のトラウマだ


なのにボクは
あの日のことを今でも憶えてる


理央を好きになった日だから

ボクは忘れることができなかった