「音楽スタジオみたいな部屋だね」
「そうだね、ここは防音になっているから普通に話して大丈夫だよ」
「そうなの?凄い!ここの家では驚くことばかりだよ。部屋にグランドピアノがあってしかも防音室になっているなんて」

70インチはありそうな壁掛けのテレビの下にはバイオリンのケースが3つ置かれてある。

入口の左脇には背の高い本棚があり、中にはたくさんの本といつくかのDVDが入っていた。

入って正面には2つの窓があり防音室だからなのか小さく、その窓が付いた壁の右端にはイーゼルが置いてあり、こちらからは裏になっていて見えないけれど絵が立て掛けてあるようだった。

「そこの本棚の上から3段目に去年の音楽コンクールのDVDが入っているよ」

わたしはソファーから立ち上がると本棚の前に行った。

そこにはざっと見ただけでもいろいろなジャンルの本が並んでいる。

音楽の本や小説、学校のテスト勉強に使う参考書や星座の本、経済やビジネスに関する本などわたしが手にしたことのない本ばかり。

その中にはスケッチブックのようなものも数冊あった。

DVDを手に取ると次の指示がきた。

「DVDをプレイヤーにセットしてテーブルの上のリモコンで再生して」
「うん」
「僕の出番は一番最後だけど最初から見る?」
「うん、最初から見る。バイオリンのことも全然わからないんだけどいろんな人の演奏を聴いてから瑞樹の演奏が聴きたい」