「じゃあ説明始めるね」
「うん」
「まず家族から紹介するよ。うちには中2の男子、不登校の中3女子、僕達と母親が違う高1の男子、それと僕にはふたごの兄がいるの。けど、ふたごの兄は2ヶ月前に交通事故で亡くなっている。ここまで聞いただけでも驚くことだらけだよね」

確かに驚いていた。あまりにも簡単に瑞樹のことを話すから。それと思っていた以上に深い事情がありそうだったから。

「話を続けるね」
「うん、お願い」
「中2の弟は難しい年頃であまり口を利いてくれないのと、変な態度を取ったり嫌なものの言い方をする時があるの。不登校の妹は洗濯係をしていて、洗濯と食事とお風呂以外は部屋からほとんど出てこない。母親の違う弟は自室で食事をしているの。ちなみに彼は家にいないことが多くて家にいても自室にいることがほとんどだし夕食もみんなと取らないから滅多に会うことはないと思うよ。もっともこの広い家じゃあ誰とも会わずに1日が終わるなんてことも普通にあるんだけどね。ふたごの兄が亡くなったことを今まで真琴に話さなかったのは、いい話ではないから話さなかった、それだけのことだよ。ざっくりとした説明になっちゃったけど、僕が今話したことは真琴がここで働き始めたらすぐにわかることだし、だったら最初に話しておいた方が混乱しないで済むかと思って話したんだよ」

窓の外では木や植物が爽やかな風に吹かれ涼しげに揺れている。

風通しが良く光がふんだんに入ってくるこの豪邸に闇が潜んでいるなんておおよそ思わない。

「ありがとうちひろ色々と話してくれて。言いたくないこともあったかもなのに」
「ううん」